尺骨神経支配の筋の覚え方！語呂合わせしない楽な方法とは？

尺骨神経支配の筋の覚え方、学習方法について書きました。

ちなみに、橈骨神経支配の筋の覚え方については、別記事に書いていますので、併せて参考にしていただくと幸いです。

尺骨神経支配の筋について

尺骨神経支配の筋（一覧）

尺骨神経支配の筋の数は、母指対立筋まで含めると、以下の１２種類です。

・尺側手根屈筋　

・深指屈筋（環指、小指へ行く分）

・短母指屈筋

・（母指対立筋の一部）　

・母指内転筋

小指球の筋（・短掌筋、・小指外転筋、・短小指屈筋、・小指対立筋）

中手筋（・第３、４虫様筋、・掌側骨間筋、・背側骨間筋）

筋の名称の覚え方（語呂合わせしない楽な方法）

解剖学の覚え方や学習方法については、別の記事に書いていますので参考にしてください。

基本と例外を覚える

基本的に尺骨神経支配の筋は、前腕の尺側、小指側の筋、骨間筋（掌側骨間筋、背側骨間筋）を支配しています。
まずは、これを覚えます。

そして、上記のことを頭に入れてから筋を整理します。

前腕の尺側にある筋は・・尺側手根屈筋です。
（ちなみに、伸筋は基本的に橈骨神経支配ですので、尺側手根伸筋は含まれないことになります。）

次に、小指側の筋ですが、これは、・短掌筋、・小指外転筋、・短小指屈筋、・小指対立筋の４つです。
これは、申し訳ないですが、そのまま覚えることになります。

例外についてですが、
深指屈筋の尺側の２つ、短母指屈筋（深頭）、母指内転筋、虫様筋（第３、４）です。

このようにして、グループ分けしてから覚えると、忘れにくいですし、意味のある覚え方になりますので思い出しやすいです。

二重神経支配の筋が含まれますので、尺骨神経支配の筋を覚える際には注意が必要ですね。

尺骨神経支配の筋の詳細（一覧）

尺側手根屈筋　flexor carpi ulnaris；FCU

	起始		停止	作用	髄節	神経
5.尺(しゃく)側(そく)手(しゅ)根(こん)屈筋 flexor carpi ulnaris ；FCU 最も内側にある半羽状筋．二頭の間を尺骨神経が通る．	上腕頭	・内側上顆 ・前腕筋膜	・豆状骨※，豆(とう)鈎(こう)靱帯，豆(とう)中(ちゅう)手(しゅ)靱帯 ・有鈎骨鈎 ・第5中手骨底掌側	・手関節の掌屈，尺屈 （・肘関節の屈曲） ・小指外転筋の固定筋	C7,8,T1	尺骨神経
	尺骨頭	・肘頭から尺骨の近位3/5までの後面

※上腕骨の内側顆上稜は，上腕骨の内側縁下端の角張った部分で内側上顆に続く部分（⇒骨学）．

※豆状骨は，尺側手根屈筋の中にできる種子骨．

深指屈筋　flexor digitorum profundus （環指、小指へ行く分）

深指屈筋は二重神経支配で、示指と中指に行く分は、正中神経（前骨間神経）支配です。

深層	起始	停止	作用	神経
1.深(しん)指(し)屈筋※ flexor digitorum profundus この腱から虫様筋が起こる．尺骨骨幹部の中央尺側の皮下にあり，触診できる	・尺骨（近位1/3の前面） ・前腕骨間膜（内側1/2）	第2～5指の ・末節骨底の掌側	・示指，中指のMP，PIP，DIP関節屈曲（・手関節の掌屈）	正中神経の枝の 前骨間神経 C7,8,T1
	浅指屈筋と尺側手根屈筋の深層を下り4つの筋腹，4腱に分かれ手根管を通る．手掌に出た腱は浅指屈筋腱の裂孔を通って停止部へ．		・環指，小指のMP，PIP，DIP関節屈曲（・手関節の掌屈）	尺骨神経C7,8,T1

短母指屈筋　flexor pollicis brevis

この筋も、正中神経と尺骨神経の二重神経支配です。

	起始		停止	作用	髄節	神経
2.短(たん)母(ぼ)指(し)屈筋 flexor pollicis brevis 二頭の間を長母指屈筋腱が通る．	浅頭	屈筋支帯の橈側	短母指外転筋の尺側に並んで母指の ・橈側種子骨 ・基節骨底	母指の ・CM関節尺側内転 ・MP関節屈曲 ・対立	C6,7,8,T1	正中神経
	深頭	大菱形骨，小菱形骨，有頭骨，第2中手骨底			C8,T1	尺骨神経

母指対立筋　opponens pollicis

母指対立筋のほとんどは、正中神経支配ですが、一部に尺骨神経支配の部位があります。

	起始	停止	作用	髄節	神経
3.母(ぼ)指(し)対(たい)立(りつ)筋 opponens pollicis 母指球の最外側で触診．	短母指外転筋に被われ ・大菱形骨結節 ・屈筋支帯	第1中手骨骨幹部の橈側縁全体	母指の ・対立※ ・CM関節の掌側外転，尺側内転，内旋	C6,7,8,T1	正中神経
				（尺骨神経） （C8,T1）

※　母指対立筋は，中手骨に付くためMP関節には作用しない．

※　母指の「対立」は，CM関節の「掌側外転」，「尺側内転」，「掌側への回旋（内旋）」からなる．

母指内転筋　adductor pollicis

	起始		停止	作用	髄節	神経
4.母(ぼ)指(し)内(ない)転(てん)筋 adductor pollicis ▲尺骨神経麻痺では長母指屈筋の代償によるフローマン徴候Froment signが陽性となる	横頭	第3中手骨骨幹部の掌側全体	扇状に集まり母指の ・尺側種子骨※ ・基節骨底 ・指背腱膜	母指の ・CM関節の 尺側内転，掌側内転 ・MP関節屈曲 ・IP関節伸展※	C8,T1	尺骨神経
	斜頭	・第2，3中手骨底 ・有頭骨の掌側 ・小菱形骨の掌側

※　第1中手骨頭の掌側には種子骨が２個（橈側種子骨，尺側種子骨）並んでおり短母指外転筋，短母指屈筋，母指内転筋が付く．

小指球の筋（４つ）

小指球筋	起始		停止		作用	神経
1.短(たん)掌(しょう)筋 palmaris brevis 小さな薄い皮筋．	手掌中央の ・手掌腱膜の尺側縁		小指球内側縁の皮膚		・小指球の皮膚を引き，つかみ易くする	C8,T1	尺骨神経
2.小(しょう)指(し)外転筋 abductor digiti minimi 手掌の最も尺側にある紡錘状の筋．	・豆状骨 ・豆鈎靱帯 ・屈筋支帯		・指背腱膜	小指の ・基節骨底の尺側 ・種子骨	小指の ・MP関節外転，屈曲 ・PIP，DIP関節伸展 ・CM関節屈曲（対立）
3.短(たん)小(しょう)指(し)屈筋 flexor digiti minimi brevis 3%程度欠ける．	小指外転筋の橈側にやや被われ	有鈎骨鈎・屈筋支帯			小指の ・MP関節屈曲，外転 ・PIP，DIP関節伸展 ・CM関節屈曲（対立）
4.小(しょう)指(し)対(たい)立(りつ)筋 opponens digiti minimi	小指外転筋と短小指屈筋に被われ，短小指屈筋とともに		第5中手骨骨幹部の尺側縁の全長		・小指の対立※（CM関節屈曲，回旋）

※　小指対立筋は，中手骨に付くためMP関節には作用しない．
※　小指の「対立」は，小指のCM関節「屈曲」と「掌側への回旋」からなる

中手筋（３つ）

中手筋	起始		停止		作用	神経
1.虫(ちゅう)様(よう)筋※ lumbricals 4個の円柱状の筋．	第Ⅰ，Ⅱ虫様筋	示指と中指の深指屈筋腱橈側	扁平な腱となり，腱は示指～小指のMP関節よりも遠位で深横中手靱帯の掌側を通って橈側から手背に向かい	指背腱膜※	手指の ・MP関節屈曲，示指の外転，中指の橈側外転，環指と小指の内転 ・PIP，DIP関節伸展 （DIP関節屈曲では深指屈筋が収縮，虫様筋が弛緩，PIP，DIP関節伸展では虫様筋が収縮，深指屈筋が弛緩し同時には収縮しない．） ・ＭＰ関節伸展，ＰＩＰおよびＤＩＰ関節屈曲でストレッチできる	C8,T1	正中神経
	第Ⅲ，Ⅳ虫様筋	第Ⅲは中指と環指の深指屈筋腱 第Ⅳは環指と小指の深指屈筋腱					尺骨神経
2.掌(しょう)側(そく)骨(こっ)間(かん)筋 palmar interossei 中手骨の間にある3筋．	・第2中手骨尺側 ・第4中手骨橈側 ・第5中手骨橈側		手背の ・基節骨底 ・中節骨底 ・末節骨底		示指，環指，小指の ・MP関節内転，屈曲 ・PIP，DIP関節伸展
	MP関節の遠位で深横中手靱帯の背側を通る．
3.背(はい)側(そく)骨(こっ)間(かん)筋 dorsal interossei 中手骨の間にある4筋で母指側より第1，2，3，4背側骨間筋と呼ぶ．	・第1～5中手骨の対面		手背の ・基節骨底 ・中節骨底 ・末節骨底		示指，中指，環指の ・MP関節外転，屈曲 ・PIP，DIP関節伸展 （中指は尺側方向が尺側外転，橈側方向が橈側外転）
	二頭となって示指の橈側，中指の両側，環指の尺側から起こりMP関節の遠位で深横中手靱帯の背側を通る．

※骨間筋の停止部は，筋の破格もあり解剖学書によって記載が異なる．