橈骨神経支配の筋の覚え方、学習方法について書いています。
医療関係の学生にとって、解剖学は切っても切り離せない基本科目です。
そして、どうしても覚える必要がある科目の一つが解剖学!
今では、スラスラ言える内容でも、最初の頃は用語を覚えるだけでも一苦労したように思います。
一体、どこから手をつけると良いのか?
効率的な勉強方法があるなら、教えてほしい!
最初の頃、学生の誰もが、このような疑問を抱えながら解剖学の勉強に取り組みます。
「ゴロ合わせする暗記法」の是非とは?
世の中には、ゴロ合わせに関する専門の本まで出版されるほどの人気をほこりますが、
私自身、ゴロ合わせを使って覚えている部分は、ほんの一握りの部分に過ぎません。
殆どは、ゴロ合わせなしで覚えてしまっています。
そうです!天才なんです・・^^;
・・なんて、嘘です!
別に、ゴロ合わせが悪いとは言いませんが、ゴロ合わせを使わなくても効率的な覚え方は、他にもあります!
ゴロ合わせで覚えるメリット
一度覚えてしまえば、理由なしに思い出せます(たぶん・・)。
関連する内容を、ひとまとまりにして暗記できる点も良い点。
化学の元素記号は、ゴロ合わせで覚えました・・
それと、円周率なども・・
ゴロ合わせで覚えるデメリット
理由なしに覚えているので、後から理解する作業が必要となります。
万が一、ゴロ合わせの文言を思い出せない場合は、
・・アウトです^^;
え~と~・・・
何だったかなぁ・・
なんてことにもなりかねません。
ゴロ合わせで覚える際には、忘れた際のスペアをきちんと作っておくことが重要です。
橈骨神経支配の筋について
ようやく、本題に入ります~!
一応、橈骨神経支配の筋の覚え方について書いていますが、他の神経支配の筋についても同様の作業をすればOKです。
橈骨神経支配の筋
上腕三頭筋(一部)
(肘関節筋)
腕橈骨筋
長橈側手根伸筋
短橈側手根伸筋
(総)指伸筋
まずは、筋の名称を覚えることからですが・・
筋の名称の覚え方
解剖学の覚え方や学習方法については、別の記事にも書いていますので参考にしてください。
基本と例外を覚える!
橈骨神経支配の筋についての基本とは、
橈骨神経は、基本的に上肢の伸筋を支配する
ということです。まずは、これを覚えます。
ですので・・
上腕にある伸筋は・・上腕三頭筋とそれから派生した、肘筋、肘関節筋の3つです。
まずは、このことを理解する必要があります。
なぜ、上腕筋の一部を支配するかは、解剖学の本を見れば分かりますが、神経の走行が関係しています。
次は、前腕から手関節に関する筋ですが、
伸筋という名前のついているものは、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋です。
ですので、覚え方としては、例外の腕撓骨筋、回外筋をしっかり覚えてしまえば、後は楽です。
最後に、指に関する筋ですが、
母指、指の伸筋は、指伸筋、示指伸筋、小指伸筋、長母指伸筋、短母指伸筋です。
例外は、長母指外転筋のみとなります。
この場合は、長母指外転筋についてしっかり抑えるようにすれば、後は楽です。
このようにして、全部を丸暗記するのではなく、意味のあるまとまりにして覚えるのが、後々役にたちます。
言い忘れましたが、個別の筋については模型などを使いながら実際に確認しながら地道に行うのが意外と早道です。
補足説明
上腕三頭筋・・上腕にある伸筋の手動作筋
(肘関節筋)・・上腕三頭筋の深部の筋束の一部で、まれな破格。
腕橈骨筋・・橈側群の最も表層にある
長橈側手根伸筋・・手関節の背屈の手動作筋
短橈側手根伸筋・・手関節の背屈の手動作筋
(総)指伸筋・・母指を除く全部の指の伸筋に作用
小指伸筋・・小指の固有伸筋
尺側手根伸筋・・第5中手骨底に付く筋で、手関節の背屈に作用
回外筋・・前腕の回外に作用
長母指外転筋・・母指の外転作用(第1中手骨底に付く)
短母指伸筋・・母指の外転作用(母指の基節骨底に付く)
長母指伸筋・・母指の伸展に作用(リスター結節を通る)
示指伸筋・・示指の固有伸筋
橈骨神経支配の筋の詳細(一覧)
上腕筋
brachialis
上腕二頭筋の下(深層)にある.外側部は橈骨神経の支配を受ける.
起始 | ・上腕骨前下方2/3 ・内側上腕筋間中隔 ・外側上腕筋間中隔 ・内側顆上稜上腕二頭筋に被われて上腕の前面を下る. |
停止 | ・尺骨の鈎状突起 ・尺骨粗面 ・肘関節包の前方 |
作用 | ・肘関節の屈曲 (※前腕の回内,回外には影響を受けない) ・肘の随意的な屈曲時に関節包の挟み込みを防ぐ |
髄節 | C5,6,7 |
神経 | 筋皮神経(C5,6)、橈骨神経(C7) 外側部は橈骨神経の支配を受ける. |
上腕三頭筋
triceps brachii
上腕後方にある三頭(長頭,外側頭,内側頭)筋.外側頭と内側頭の起始部の間(橈骨神経溝)に橈骨神経と橈側側腹動脈が通る.
※長頭は肩関節と肘関節に作用する二関節筋である.
起始 | 長頭 ・肩甲骨の関節下結節 小円筋の前,大円筋の後を下る |
外側頭 ・肩甲骨の関節下結節 小円筋の前,大円筋の後を下る |
|
内側頭 ・上腕骨後面で橈骨神経溝の下内側 ・内側上腕筋間中隔 ・遠位部は外側上腕筋間中隔,内側顆上稜※,外側顆上稜※ |
|
停止 | 三頭は合して腱板となり
・尺骨の肘頭 内側頭からの線維は ・肘関節包の後方 |
作用 | 長頭 ・肘の最終伸展時に作用する. ・肩関節の伸展,内転 ・肩の下方脱臼を防ぐ |
外側頭 ・肘の最終伸展時に作用する. |
|
内側頭 ・肘の伸展初期に作用する. ・肘伸展時に肘関節包を後上方に引く |
|
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経 |
肘筋
anconeus
上腕三頭筋の内側頭の一部から独立.
起始 | ・上腕骨の外側上顆の後面 ・外側側副靱帯 ・肘関節包の後方 |
停止 | 扇状に広がり ・肘頭 ・尺骨後面上方1/4 |
作用 | ・肘伸展時に肘関節包を引き,挟み込みを防ぐ |
髄節 | C7,8 |
神経 | 橈骨神経 |
肘関節筋
articularis cubiti
希な破格.
腕橈骨筋
brachioradialis
橈側群の最も表層にある.
起始 | ・外側顆上稜※ (橈側群で最も上) ・外側上腕筋間中隔前腕の橈側を下る. |
停止 | ・橈骨茎状突起
|
作用 | ・肘関節の屈曲(特に前腕中間位で作用) ・前腕の回内,回外 (回外位および回内位から中間位に戻す) |
髄節 | C5,6 |
神経 | 橈骨神経 |
長橈側手根伸筋
extensor carpi radialis longus
起始 | ・外側顆上稜※ ・外側上腕筋間中隔長い腱となって前腕の橈側を腕橈骨筋の後に沿って下り、長母指外転筋と短母指伸筋の下を交叉し、伸筋支帯(第2区画)の下を通る. |
停止 | ・第2中手骨底の背側
|
作用 | ・手関節の背屈,橈屈 ・前腕の回内,回外 (回外位からの回内,回内位からの回外) (・肘関節屈曲) |
髄節 | C5,6,7,8 |
神経 | 橈骨神経 |
短橈側手根伸筋
extensor carpi radialis brevis
▲外側上顆炎(テニス肘)との関連が強い
起始 | ・外側上顆 ・橈骨輪状靱帯 ・指伸筋の間の腱膜長橈側手根伸筋の遠位(後方)を下って伸筋支帯(第2区画)の下でリスター結節の橈側を通る. |
停止 | ・第2,第3中手骨底
|
作用 | ・手関節の背屈,橈屈 ・前腕の回内,回外 (回外位からの回内,回内位からの回外) (・肘関節屈曲) |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
上腕骨の外側顆上稜は,上腕骨の外側縁下端の角張った部分で外側上顆から上に続く部分(⇒骨学).
(総)指伸筋
extensor digitorum
起始 | 長および短橈側手根伸筋の下方で ・上腕骨外側上顆 ・前腕筋膜の内面 ・肘の関節包 ・橈骨輪状靱帯 ・外側側副靱帯 |
停止 | 4本の腱となって伸筋支帯(第4区画)の下を通り,互いの腱は腱間結合で固定され第2~5指の背側で指背腱膜となって広がり3本の索に分かれ ・中央索(1本)が中節骨底 ・側索(2本)が末節骨底 (側索には虫様筋,背側骨間筋,掌側骨間筋が合流する) |
作用 | ・手指のMP,PIP,DIP関節伸展(,MP外転) ・手関節の背屈(,尺屈)※PIP,DIP関節の完全伸展には虫様筋,骨間筋の協力が必須. |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
小指伸筋
extensor digiti minimi
小指に向かう指伸筋から分かれた細長い筋.
小指に向かう指伸筋腱の尺側を下る.
起始 | 小指に向かう指伸筋 |
停止 | 小指背側で伸筋支帯(第5区画)を通り指伸筋とともに ・指背腱膜 ・小指末節骨底 |
作用 | ・小指のMP,PIP,DIP関節伸展(,MP外転) (・手関節の背屈,尺屈) |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
尺側手根伸筋
extensor carpi ulnaris;ECU
長く薄い筋.
起始 | 上腕頭 ・上腕骨の外側上顆 |
尺骨頭 ・尺骨後縁の上部 |
|
停止 | 前腕の最も尺側から伸筋支帯(第6区画)の下で前腕回内位では尺骨茎状突起の橈側,回外位では尺側を通り ・第5中手骨底背側 |
作用 | ・手関節の背屈,尺屈 ※TFCC(三角線維軟骨複合体)の尺側の壁となる(cf.靱帯学) |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
※PIP,DIP関節の完全伸展には虫様筋,骨間筋の協力が必須.髄節C6,7,8神経橈骨神経(後骨間神経)
回外筋
supinator
起始 | ・上腕骨外側上顆 ・外側側副靱帯 ・橈骨輪状靱帯 ・尺骨の回外筋稜 ・肘関節包後面 橈骨頸上1/3を取り巻き近位縁はフローセのアーケード※をつくり橈骨神経深枝を通す. |
停止 | ・円回内筋の停止部の上方の橈骨に広く |
作用 | ・前腕の回外 ▲後骨間神経が絞扼される回外筋症候群がある. |
髄節 | C5,6,7 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
長母指外転筋
abductor pollicis longus
起始 | ・尺骨の背面中央 ・橈骨の背面中央 ・前腕骨間膜の背面中央橈側へ斜めに下り短母指伸筋とともに,長,短橈側手根伸筋腱の上を越え伸筋支帯(第1区画)の下を通る. |
停止 | ・第1中手骨底の背面外側(橈側) |
作用 | ・母指CM関節の 橈側外転(,掌側外転) ・手関節の橈屈,掌屈,背屈(筋が掌屈と背屈の軸付近を通り両方に作用可) ・前腕回外位で回外 ・前腕中間位で回内 |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
短母指伸筋
extensor pollicis brevis
起始 | ・橈骨(長母指外転筋の起始よりも)遠位ならびに隣接する ・前腕骨間膜の背面長母指外転筋の下を併走し長,短橈側手根伸筋腱を越え伸筋支帯(第1区画)の下を通る |
停止 | 母指の ・基節骨底の背側 ・一部,指背腱膜 |
作用 | ・母指のMP関節伸展,CM関節の橈側外転,IP関節伸展 ・手関節の橈屈,掌屈,背屈(筋が掌屈と背屈の軸付近を通り両方に作用可) |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
長母指伸筋
extensor pollicis longus
起始 | ・尺骨(長母指外転筋の起始より遠位)中央背面,隣接する ・前腕骨間膜の背面伸筋支帯(第3区画)の下でリスター結節の尺側から母指側に向きを変え指背腱膜に移る. |
停止 | 母指の ・末節骨底の背側 |
作用 | ・母指のMP,IP関節伸展,CM関節掌側内転 ・手関節の橈屈,背屈 ・前腕回外位で回外 ・前腕中間位で回内 |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
示指伸筋
extensor indicis
細長い筋.
起始 | ・尺骨(長母指伸筋の起始よりも遠位)下部の骨間縁ならびに隣接する ・前腕骨間膜背面長母指伸筋の尺側を指伸筋腱と伸筋支帯(第4区画)の下を通り指伸筋の尺側を並走する. |
停止 | ・指背腱膜に移行
|
作用 | ・示指のMP,PIP,DIP関節伸展 (・手関節の背屈) |
髄節 | C6,7,8 |
神経 | 橈骨神経(後骨間神経) |
▲第1区画を通る短母指伸筋,長母指外転筋の狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病de Quervain disease)がある.
この冠名(かんむりめい)テストにはアイヒホッフテストEichhoff test(通称 フィンケルシュタインテストFinkelstein test)がある.
橈骨神経について
橈骨神経についての確認事項です。
走行
腕神経叢の後神経束の延長として始まり,腋窩を出て大円筋の下方を通り上腕骨の内側から後面に上腕骨の橈骨神経溝に沿って回り,下方に下る.
このとき上腕三頭筋,肘筋,上腕筋(の一部),腕橈骨筋,長橈側手根伸筋に枝を出す.
肘窩の橈側に達すると深枝と浅枝(皮枝)に分かれる.
橈骨神経の高位麻痺とは?
▲上腕骨の骨幹部骨折では橈骨神経溝付近で損傷され(橈骨神経の高位麻痺),上腕三頭筋以下の全ての橈骨神経支配の筋が麻痺し下垂手drop handとなる.
(※下垂手となった場合でも装具などでMP関節を中間位~伸展位に固定すれば虫様筋や骨間筋によりPIP,DIP関節の伸展が可能となる.)
橈骨神経の低位麻痺とは?
回外筋付近で橈骨神経の深枝(後骨間神経)が損傷された場合(▲橈骨神経の低位麻痺),手指の伸筋群は全て麻痺するが手関節の伸筋(長橈側手根伸筋)は残るため手関節が橈側に偏位した下垂指drop fingerを呈し下垂手drop handにはならない.
橈骨神経深枝(後骨間神経)
深枝(後骨間神経)は前腕骨間膜の後方を走行する筋枝(運動枝)で、短橈側手根伸筋,回外筋に枝を出した後,回外筋の中(Frohse のアーケード:回外筋の近位縁の線維性または膜性のアーチ)を通り指伸筋,小指伸筋,尺側手根伸筋,長母指外転筋,短母指伸筋,長母指伸筋,示指伸筋を支配する.
橈骨神経浅枝
浅枝は皮枝(感覚枝)で筋枝を持たず最終的には手背橈側の皮膚に分布する.
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