<解説>第50回理学療法士・作業療法士国家試験問題(50P34) 肘部管症候群

34 肘部管症候群を疑う所見はどれか。2つ選べ。

1.小指のしびれ

2.Froment徴候

3.Tear drop徴候

4.母指球の萎縮

5.正中神経伝導速度の低下


【解説】

肘部管は、上腕骨の内側上顆の後方にある尺骨神経溝に形成されます。肘部管症候群は、この部位で尺骨神経が障害されたものです。変形性肘関節症や肘部管内のガングリオンなどが原因となります。この部位で尺骨神経位が障害されると、尺骨神経に支配される筋が全て障害され、筋力低下や筋萎縮を来たします。

尺骨神経は、感覚神経と運動神経が含まれています。尺骨神経の感覚神経は、手首の手前で背側枝(感覚神経)を分枝し尺側背側の感覚を支配します。また、手関節部では尺骨神経管(ギヨン管)を通って尺側掌側の感覚を支配します。そのため、肘部管での感覚障害は尺側の掌側と背側に生じますが、ギヨン管で障害された場合の感覚障害は、尺側の掌側のみに生じ、背側の感覚は正常です。(ギヨン管症候群では、尺側手根屈筋深指屈筋以外の尺骨神経支配の筋が障害されます。)

Froment徴候は、尺骨神経が障害されたときに陽性となります。このテストは、紙を示指と母指でつまんで引っ張ってもらう際に、尺骨神経が障害されている場合、母指内転筋骨間筋などが筋力低下をおこすため普通にはさめなくなり、長母指屈筋正中神経)を使って母指のIP関節を屈曲させて紙を押さえる代償動作がみられます。

Tear drop徴候は、涙のしずく変形とも呼ばれ、正中神経が障害されたときに観察されます。これは母指と示指でOをつくる(パーフェクトO)テストを行った際に、正中神経で支配される長母指屈筋深指屈筋(Ⅰ・Ⅱ)、母指対立筋などが障害されるため示指のDIP関節と母指のIP関節を屈曲させることができないために生じます。この際、母指内転筋尺骨神経)を使って母指と示指の指尖を合わせるため、このような徴候が生じます。

神経伝導速度に関しては、尺骨神経が肘部管で障害されるため、障害部位以下の尺骨神経の伝導速度の低下が生じます。正中神経は関係ありませんので、その伝導速度は正常です。

 尺骨神経麻痺についての参考ページはこちら。

答え:1,2

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