腸腰筋iliopsoasについてのまとめ
腸腰筋は、腸骨窩(骨盤)内にあり主に股関節の屈曲に作用します.
(小腰筋,)大腰筋,腸骨筋の総称.
股関節の主な屈筋で大腰筋と腸骨筋の筋腹は筋裂孔※を通る.
大腿骨頭を前面から被い股関節を安定性させ大腿骨の小転子に付く.
▲短縮すると骨盤の前傾や股関節の屈曲拘縮の原因となり,Thomasテスト(動画)が陽性となる.
1.小腰筋
psoas minor
細い筋で40~50%は欠ける.
起始 | ・T12/L1椎体外側 ・T12/L1椎間板外側 |
停止 | 腸骨筋膜に放散し ・腸恥隆起 |
作用 | ・体幹屈曲の補助 |
髄節 | L1,2 |
神経 | 腰神経叢 |
2.大腰筋
psoas major
二頭の間に腰神経叢がある.
起始 | 浅頭 ・T12~L4椎体外側 ・椎間板外側 |
深頭 ・全ての肋骨突起 ・第12肋骨 |
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停止 | ・大腿骨の小転子 |
作用 | ・股関節の屈曲,外旋 体幹の ・側屈:片側の反作用 ・屈曲:両側の反作用 ・腰椎の安定 |
髄節 | L1,2,3,4 |
神経 | 腰神経叢 |
3.腸骨筋
iliacus
起始 | ・腸骨陵の内唇 ・腸骨窩(上2/3) ・上前腸骨棘の内側 ・下前腸骨棘の内側とその下方 ・仙腸靱帯と腸腰靱帯の前方 ・股関節関節包の上部腸骨筋の内側を通る大腰筋と合して、筋裂孔※の中の外側を通って下り、大腿骨頭前面を被う. |
停止 | ・大腿骨の小転子 |
作用 | ・股関節の屈曲,外旋 ・骨盤の前傾 |
髄節 | L2,3,4 |
神経 | 大腿神経 |
※筋裂孔muscular lacuna
鼠径靱帯と寛骨との間に形成される間隙の内側部.
内側から大腰筋,腸骨筋が通り,その2つの筋の間で鼠径靱帯の直下に大腿神経を通す.
血管裂孔vascular lacuna
鼠径靱帯と寛骨との間に形成される間隙の外側部.
内側からローゼンミューラーのリンパ節Rosenmüller node,大腿静脈,大腿動脈,陰部大腿神経の大腿枝の順で中を通る.
筋裂孔と血管裂孔の間は腸恥筋膜弓※iliopectineal archで分けられる(⇒靱帯学).
大腿神経femoral nerveのまとめ
腰神経叢の最大の枝でL2,3,4神経からなる.
筋枝
大腰筋の後ろを下り外側下方にある腸骨筋に枝を出した後,大腰筋(外側縁)と腸骨筋(内側)の間を下り,筋裂孔※の中の内側を通る.
皮枝
筋裂孔を通った大腿神経が内側に分かれたもの.
大腿前面,後面内側,下腿および足の内側半分の皮膚に分布する.
下腿と足の内側半分の皮膚に分布する枝を伏在神経saphenous nerveという.
この神経は大腿内側を大腿動脈,大腿静脈とともに下行し大腿下部内側の内転筋管※adductor canal(=subsartorial or Hunter’s canal)を通り内転筋裂孔の手前で皮下に出る.
その後,伏在静脈に沿って下行し下腿と足背の皮膚に分布する.
大腿神経ストレッチテスト(FNST)
▲上位の腰部椎間板ヘルニア(L2/3など)では大腿神経ストレッチテスト(FNST)が陽性となる.
腹臥位で、検査する側の膝関節を屈曲させてから、股関節を伸展させると大腿神経がストレッチされますが、この際に大腿神経に沿った痛みが出現し、股関節の伸展が妨げられれば陽性です。
大腿直筋に短縮がある場合の痛みとは異なります。患側と健側の左右差を比較することも重要です。
※内転筋管Hunter’s canal
大内転筋の後部線維(大腿骨の内側上顆の内転筋結節に付く)の大腿付着部の内側縁と内側広筋の下部との間に形成される結合組織性の強い膜でできた管.
下方は内転筋腱裂孔によって膝窩に開く.