股関節の概要
肩関節(球関節)より安定性はあるが可動域は制限される.
大腿骨頭を被う関節軟骨は骨頭中央部が最も厚く,縁は薄い.
(▲脱臼はAllisテスト,疼痛はPatricテストが陽性となる.)
□key words
関節唇acetabular labrum |
寛骨臼横靱帯transverse acetabular ligament |
関節包joint capsule |
関節包内靱帯intraarticular ligament
大腿骨頭靱帯ligament of head of femur 閉鎖動脈obturator artery 輪帯zona orbicularis 腸骨大腿靱帯iliofemoral ligament(Y靱帯) 恥骨大腿靱帯pubofemoral ligament 坐骨大腿靱帯ischiofemoral ligament 腸恥包iliopectineal bursa |
股関節の関節唇(かんせつしん)
寛骨臼と寛骨臼横靱帯の全周をとり囲む幅0.5~1cmの線維軟骨性の三角柱.
そこに入る大腿骨頭の適合を補う.
月状面の軟骨および寛骨臼横靱帯に移行し寛骨臼の骨縁に固着する.
股関節の関節包
寛骨臼の周囲および寛骨臼横靱帯から起り大腿骨の前面では大転子と転子間線,後面は転子間稜より約1.5cm上方で大腿骨頸に付く.
そのため前面は大腿骨頸を全て包み,後面は頸の内側2/3を包む.
表層の線維は縦走,深層は斜走,横走および輪走する.
股関節の関節包は厚くて丈夫であるが最も薄くなる部分は各補強靱帯の間と寛骨臼切痕付近にある.
寛骨臼横靱帯(かんこつきゅうおうじんたい)
関節唇の一部で寛骨臼切痕の上に張る.
この靱帯と寛骨臼切痕の間から脂肪組織や血管(閉鎖動脈の枝)が関節腔に入る.
関節包も起始する.
大腿骨頭靱帯
大腿骨頭窩から寛骨臼切痕(月状面の尖端)に三角形に広がり寛骨臼横靱帯に付く関節包内靱帯※.
大腿骨頭に入る血管(閉鎖動脈の枝)を関節腔内に通す.
寛骨臼の下方(寛骨臼切痕の周辺)に付着部があるため過度の股関節の内転(大腿骨頭窩の過度の上方への移動)を制限する.
輪帯(りんたい)
関節包の深部で大腿骨頸部をとりまく靱帯.
上部は腸骨大腿靱帯(Y靱帯),下部は坐骨大腿靱帯の線維と結合し骨頭が脱臼するのを防ぐlocking ringとして作用する.
坐骨大腿靱帯の続きとされる場合もある.
腸骨大腿靱帯(Y靱帯)
下前腸骨棘(AIIS)および寛骨臼の上縁から起こり二つに分かれ大転子および転子間線に付く関節包靱帯※.
逆Y字型をした人体最強の靱帯で長さ6~8cm,厚さ0.5~1.4cm,幅2.5~3cm.
関節包の前面と上面を補強し股関節の伸展と内転を制限し直立姿勢の保持を助ける.
恥骨大腿靱帯
腸恥隆起,恥骨体,恥骨上枝から起こり関節包と混じりながら腸骨大腿靱帯(Y靱帯)の内側部の深層(小転子の上方付近)に付く関節包靱帯※.
股関節の外転と伸展を制限し関節包を前面から補強する.
坐骨大腿靱帯
寛骨臼縁の後下部(坐骨上部)から起こり大腿骨頸部を上外側にラセン状に被い輪帯と大腿骨の転子窩付近に付く関節包靱帯※.
股関節の外転,内旋および伸展を制限し関節包を後面から補強する.
腸恥包
股関節の前面,腸骨大腿靱帯と恥骨大腿靱帯の間に存在する人体最大の滑液包.
腸腰筋(大腿神経,腰神経叢)と腸恥隆起または股関節の関節包の薄く力学的に弱いところにある.
2包に分かれることも多く,股関節の関節包とも交通することがある.
関節(包)内靱帯
関節包内にある靱帯.
関節(包)靱帯
関節包の線維膜が発達したもの.
股関節の靱帯 | 股関節の運動 | |||||
屈曲 | 伸展 | 外転 | 内転 | 外前 | 内旋 | |
Y靱帯(上部)※ | - | + | - | ⧺ | + | - |
Y靱帯(下部)※ | - | ⧺ | + | + | + | - |
恥骨大腿靱帯 | - | + | ⧺ | - | + | - |
坐骨大腿靱帯 | - | + | + | - | - | + |
-~⧺:靱帯の緊張度 (Lanz et al.1959)
※Y靱帯(腸骨大腿靱帯)は下前腸骨棘(AIIS)および寛骨臼の上縁から起こり,上部線維は大腿骨の転子間線の上方,下部線維は転子間線の下方へ付く.