大腿筋膜張筋の作用についてのまとめです!
大腿筋膜張筋の起始、停止、支配神経、髄節についてもまとめています!
この筋は、臨床上非常に重要な筋の一つです!
股関節周辺の痛みの原因にもなります!
大腿筋膜張筋について
英語では、tensor fasciae latae;TFL といいます。
中殿筋の前方にある紡錘状の筋で、
この筋が短縮するとオーバーテスト(Ober Test)が陽性となります!
大腿筋膜張筋の起始部
起始は、筋が起こる場所です。
この筋の起こる場所は、
・腸骨稜の外唇(がいしん)の前方
・上前腸骨棘(ASIS)の外側面
・大腿筋膜の内面の大腿骨近位部
走行は?
起始部から停止部までの間をどのようにすすむのかが走行と言います!
大腿筋膜張筋の場合、
起始部から大腿の前外側を下行し、腸脛靱帯という靭帯性の膜に移行していきます!
移行するとは、大腿筋膜張筋の筋がしだいに靭帯性の膜に変わっていくことを意味します!
大腿筋膜張筋の停止部
大腿筋膜張筋は、腸脛靭帯に移行しますので通常は、腸脛靭帯の停止部が
大腿筋膜張筋の停止部として取り扱われます!
腸脛靭帯 iliotibial tractとは?
大腿の筋全体を包む大腿筋膜(深筋膜)の外側部が
厚く腱膜様になった部分をいいます。
上前腸骨棘と腸骨稜、一部は大殿筋(上部線維)、大腿筋膜張筋の停止腱として起こります。
そして、大腿の外側を下り、
脛骨の外側顆の前外側面(腸脛靱帯粗面、ガーディー結節)に付きます。
そのほか、下腿筋膜にも放散します。
このガーディ結節の部分が大腿筋膜張筋の停止部です!
大腿筋膜張筋の作用
両方の関節に作用する理由は?
股関節をまたいだ部分が起始部となっているため
股関節への作用があり、
また、
膝関節への作用があります。
下腿の外旋に作用する理由としては、
停止部が、脛骨の外側顆の前方部分になるためです!
内外旋どちらに作用するかを考えると、
脛骨の前方部分に停止しているので、
結果として、脛骨の外側部分を後方に引っ張ることになります!
そのため、下腿の外旋が生じます。
股関節に対する作用
・股関節の屈曲
・股関節の外転
(・股関節の内旋)
膝関節に対する作用
・膝関節の伸展
・下腿の外旋
骨盤に対する作用
・骨盤の前傾
腸骨稜(外唇)の前方に起始するため、この作用があります!
臨床上の重要な作用
上記のような作用がある大腿筋膜張筋ですが、
簡単にいうと
大腿の両側を覆って膝関節や股関節の側方への安定性に作用する筋ということができます。
そのため、
変形性膝関節症などでO脚になり、側方の動揺性が出て来ているような方では
この筋が重要な役割を果たします!
膝の安定性を保とうとして、
過剰に働きすぎて固くなったり、短縮したりします!
この場合、この筋の筋腹部分を押すと、
圧痛があります!
この筋の短縮をストレッチしたり、
筋を緩めることで痛みを軽減することはできますが
よく考えた治療が必要となります!
長距離ランナーが、腸脛靱帯炎を起こすことが有ります(ランナー膝)が
大腿筋膜張筋の停止部の付近の炎症が原因です!
治療する場合は、走行する際の姿勢、膝や足関節の使い方など
総合的な考察とアプローチが必要となってきます!
支配神経と髄節
上殿神経支配です!
髄節は、L4、5、S1
参考文献(1~10)
この解剖学の記事を書く上で参考にした主な文献です。
主な参考文献を合わせると、40冊ほどになります。
その中でも、特に活用した文献10冊についてご紹介します。
1)森 於菟 ほか:分担 解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学(改定第11版).金原出版,1982
2)ヘルガ・フリッツ (著), ヴェルナー・プラッツァー (著):解剖学アトラス原著第10版.文光堂,2012
3)金子 丑之助:日本人体解剖学 (上巻).南山堂; 改訂19版 (1999/12/1)
4)Oatis CA:Kinesiology.Lippincotto Williams & Wilkins,2009
原著(英語版)を使用しましたが、翻訳版が出ています。
英語が苦手な方は、翻訳版がおすすめです。
原著(英語版)の英語は、分かりやすく書かれています
ので挑戦したい方は、こちらがおすすめです。
価格も翻訳版よりも安いですよ。
私が参考にした洋書は、第2版でしたが
第3版が出版されていますので、最新版がおすすめです。
Kinesiology: The Mechanics and Pathomechanics of Human Movement by Carol A Oatis PT PhD(2016-02-13)
5)Donald A.Neumann:筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版 単行本(ソフトカバー) – 2018/12/28
こちらも運動学では定番の教科書です。
私が参考にしたのは、英語版ですが、日本語翻訳版が
出版されています。
6)Keith L Moore:Clinically Oriented Anatomy ,Lippincott Williams & Wilkins;4 edition,1999
こちらも翻訳版が出ています。
世界的な名著なのでおすすめです。
英語ができる方は、洋書の方がおすすめです。
価格は、翻訳版の半分ほどで、しかも最新版すので。
7)Florence Peterson Kendall, Elizabeth Kendall McCreary, Patricia Geise Provance, Mary McIntyre Rodgers, William Anthony Romani:Muscles: Testing and Function, with Posture and Pain,Lippincott Williams & Wilkins; Fifth Edition edition (February 1, 2005)
こちらの本も運動学の名著です。
日本語版が出ていますのでご紹介します。
英語での原書はこちらです。
8)橋本 淳・信原克哉:肩診療マニュアル 第3版.医歯薬出版,2008.1
最新版が出ていますので、そちらを紹介します。
肩に関しては、おすすめの本です。
9)J. Castaing 他/中山彰一 ・井原和彦(訳):図解 関節・運動器の機能解剖 下肢編.協同医書出版,1986
変わった視点から分かりやすいイラストを用いて解説してあります。
運動器の学習をする際には、一度目を通されることをおすすめします。
10)Gray’s Anatomy for Students: With STUDENT CONSULT Online Access, 3e
この本も翻訳されていますので、最新版を掲載します。
英語でも、読みやすい本です。