➡筋紡錘についても解説しています!!
腱反射とは?
そもそも腱反射が起こる理由の一つは、筋(骨格筋)が瞬時に引き伸ばされた時、筋の損傷を防ぐメカニズムが作動する防御システムと考えらえています。
筋は収縮することで、その力を発揮しますが、筋が収縮する時は、筋を構成する筋線維と呼ばれる組織が関係しています。
筋(骨格筋)は、通常、その両端が骨に付着しており、その間に関節があります。
筋のセンサーについて
筋にはセンサーが組み込まれています。
筋線維と並列に存在する筋紡錘(きんぼうすい)と、筋線維と直列に存在する腱紡錘(けんぼうすい)(ゴルジ腱器官)と呼ばれるものです。
腱反射(急激な筋の伸張)に反応するのは、筋紡錘です。
(・・・急激な筋の伸張に対する閾値が筋紡錘が腱紡錘よりも低いため、腱紡錘が反応する前に筋紡錘が反応します。)
例えば、膝蓋腱反射を例にとって考えると、膝蓋腱(膝蓋骨から脛骨粗面の間にある)を打腱器などで叩くと、腱が急激に引き伸ばされます。
そうすると、その腱につながっている大腿四頭筋自体も急激に伸ばされることになります。
大腿四頭筋の中にもセンサーである筋紡錘が存在しますので、(筋と並列に存在する)筋紡錘が急激に引き伸ばされることでその情報をキャッチします。
センサーと関係する神経
情報は、Ⅰa神経線維と呼ばれる感覚神経を通して筋紡錘から脊髄に向かって(求心性に)行きます。
そして、脊髄の中に入って行き、その引き伸ばされた筋線維(大腿四頭筋)に命令を伝える神経線維(α運動ニューロン)に情報を送ります。
その神経は脊髄の前角と呼ばれる場所から大腿四頭筋へ向かって(遠心性に)刺激の情報を伝えます。
そして、α運動ニューロンからの情報によって大腿四頭筋は収縮させられ、即座に膝関節の伸展が起こります。
膝が伸展するということは、大腿四頭筋の起始と停止が近づくことを意味し、結果的に大腿四頭筋の急激な引き伸ばしが解消されることになります。
筋の引き伸ばしが解消されることは、そのまま筋が引き伸ばされて生じる筋損傷を防ぐことを意味します。
この一連の神経経路を反射弓(はんしゃきゅう)Reflex arcと呼びます。
正常な腱反射は、このようにして起こります。
この反射弓のどこかに障害が生じると、反射が起こらなくなります。
末梢神経の損傷がその代表例です。
では、なぜ反射の亢進が生じるのか?
それは、筋紡錘の感度が上がった時に生じます。
筋紡錘の中にある特殊な筋線維を錘内筋線維と呼びます。
ちなみに、筋線維は錘外筋線維とも呼ばれます。
筋に関わる運動ニューロン
通常の骨格筋(錘外筋線維)に収縮する命令を送る神経線維はα運動ニューロン、筋紡錘の中にある特殊な筋線維(錘内筋線維)に収縮する命令を送る神経線維をγ(ガンマ)運動ニューロンと言います。
この2つの運動ニューロンは、両方とも脊髄の前角細胞からスタートしています。
γ(ガンマ)運動ニューロンが作動すると筋紡錘のたるみをとることができますが、これは通常、筋収縮が起こると同時に作動するので、筋が収縮して、同時に筋紡錘がたるんでしまうのを防ぐ役割をしています。
この調整は自動的に行われていますが、その自動調整は、脳や、抑制性に作用する網様体脊髄路などが関与していると考えられています。
もし、膝蓋腱反射の検査を行った際に、その反射弓よりも上位の中枢神経に障害が生じた場合、抑制性に作動すべき経路が遮断されてしまい、ガンマ運動ニューロンの活動が高まります。
そうなると、筋紡錘の感度が上昇(閾値が低下)してしまい、少しの刺激にも筋紡錘が反応し、結果として反射が亢進することになります。
腰部椎間板ヘルニアの好発部位で反射はどうなるのか?
反射弓を考えると、膝蓋腱反射は大腿四頭筋が関与するため、大腿四頭筋の髄節(L2,3,4)で、アキレス腱反射は主にS1が関与しています。
すなわち、この髄節のレベルより上位にある中枢神経(脳や脊髄)に問題が生じると反射が亢進し、反射弓のどこかに問題が生じると反射は低下や減弱、あるいは消失することになります。
腰部椎間板ヘルニアの好発部位
では、腰部椎間板ヘルニアの好発部位であるL4/5、L5/S1レベルで椎間板ヘルニアが神経を障害する場合が考えられる。
成人の脊髄は?
実は、成人の場合、中枢神経である脊髄がL1,2のレベルまでで終わっており、それより下は末梢神経である馬尾神経(脊髄神経)が脊柱管の中を通っています。
結論
椎間板ヘルニアの好発部位には、脊髄がないため、腰部の椎間板ヘルニアの好発部位では中枢神経(脊髄の障害)の障害は生じず、反射が亢進することはありません。
(但し、極めて稀ではありますが、L1レベルで椎間板ヘルニアが脊柱管の中央に向かって生じて脊髄が障害されれば、反射が亢進する可能性があります。)