上位運動ニューロンとは何かを解説しています。
どこからどこまでが上位運動ニューロンになるのか?
錐体路と上位運動ニューロンの違いは?
このような疑問が解決できる内容になるように書いています。
下位運動ニューロンとの違いなどについても解説していますので参考にしてください。
運動ニューロンとは?
まずは、運動ニューロン(運動神経)について説明します。
体性運動神経とは?
運動ニューロンとは、厳密には、骨格筋を支配する体性運動神経と内臓の筋(平滑筋)や心筋を支配する内臓運動神経の2つからなります。
ただし、
上位運動ニューロンに関係するのは、体性運動神経です。
内臓運動神経とは?
内臓運動神経は、自律神経(交感神経、副交感神経)によってコントロールされています。ですので直接的に随意運動に関係することの多い上位運動ニューロンには含まれません。
上位運動ニューロンとは?
骨格筋を支配する体性運動神経は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンからなります。
①大脳皮質(運動野)から脊髄の前角細胞、
②大脳皮質(運動野)から脳神経の運動神経核までが上位運動ニューロンです。
部位的に考えると、大まかに中枢神経(脳、脊髄)が関与すると考えると分かりやすいと思います。
医学書の分類によっても異なりますが、
錐体路(皮質脊髄路)=上位運動ニューロン です。
※皮質脊髄路=外側皮質脊髄路+前皮質脊髄路
ただし、臨床所見などとの関連性を重視すると、やはり皮質核路を含めた形での分類が妥当だと考えられます。
ですので、
上位運動ニューロン=錐体路(皮質脊髄路)+皮質核路 です。
外側皮質脊髄路について
上位運動ニューロンに含まれる経路の一つで、脊髄の外側部(側索)を通る下降性の神経線維です。
大脳皮質の運動野(中心前回)
↓
内包の後脚
↓
中脳の大脳脚
↓
橋縦束
↓
延髄の錐体
↓
下部延髄で錐体交叉
(75~90%程度)
(反対側へ移動)
↓
脊髄の側索
↓
脊髄の前角細胞
脊髄の前角細胞までは、1本の神経線維のまま到達します!
前皮質脊髄路について
上位運動ニューロンに含まれる経路の一つで、脊髄の前索を通る下降性の神経線維です。
大脳皮質の運動野(中心前回)
↓
内包の後脚
↓
中脳の大脳脚
↓
橋縦束
↓
延髄の錐体
↓
交叉せずに、脊髄の前索を下行
(運動線維の10~25%程度)
↓
①目的の筋へ向かう直前に
脊髄で白交連交叉をして
反対側の前角細胞へ
(白交連は、脊髄の中心部分のすぐ前にあります。)
②一部は、交叉せずに
同側の前角細胞へ
同じく脊髄の前角細胞までは、1本の神経線維のまま到達します!
(※一部は、交差せずに同側の前角細胞へ到達します。)
皮質核路とは?
皮質核路には延髄の錐体を通る線維と通らない線維があるからです。
皮質核路は、大脳皮質から核(各種、脳神経核)まで到達してから目的の筋(首から上の顔の筋など)へ向かう線維を言います。
具体的には、
動眼神経核(Ⅲ)
滑車神経核(Ⅳ)
三叉神経運動核(Ⅴ)
外転神経核(Ⅵ)
顔面神経核(Ⅶ)
疑核(舌咽神経:Ⅸ、迷走神経:Ⅹ、副神経:Ⅺ)、舌下神経核(Ⅻ)
に向かう線維です。
延髄の錐体を通る皮質核路の線維
疑核(舌咽神経:Ⅸ、迷走神経:Ⅹ、副神経:Ⅺ)、舌下神経核(Ⅻ)に向かう運動神経の線維です。
これらの神経線維は、一応、延髄の錐体部分を通り、それぞれの運動神経核へ向かいます。
それぞれの神経核は、錐体路で言えば前角細胞にあたると考えると分かりやすいと思います。
延髄の錐体を通らない皮質核路の線維
これらの神経線維は、延髄の錐体を通らず、その前の中脳や延髄でそれぞれの神経核へ向かいます。
それぞれの神経核は、錐体路で言えば前角細胞にあたると考えると分かりやすいと思います。
中脳からの線維
・・動眼神経核(Ⅲ)、滑車神経核(Ⅳ)
橋からの線維
・・三叉神経運動核(Ⅴ)、外転神経核(Ⅵ)、顔面神経核(Ⅶ)
上位運動ニューロンと錐体路の違い
上位運動ニューロン≒錐体路
上位運動ニューロンと錐体路は、同じではありません。
上位運動ニューロンの一部
であり、上位運動ニューロンに含まれます。
下位運動ニューロンとは?
一般的には、脊髄の前角細胞から骨格筋までの神経線維が下位運動ニューロンです!
厳密には、
動眼神経核(Ⅲ)
滑車神経核(Ⅳ)
三叉神経運動核(Ⅴ)
外転神経核(Ⅵ)
顔面神経核(Ⅶ)
疑核(舌咽神経:Ⅸ、迷走神経:Ⅹ、副神経:Ⅺ)、舌下神経核(Ⅻ)
の各々の皮質核路の核に接続する神経線維も含まれます。
「上位運動ニューロン」+「下位運動ニューロン」の両方が機能することで随意運動が可能となっています。
上位運動ニューロンと下位運動ニューロン違い
下位運動ニューロン障害の特徴
下位運動ニューロンが障害されると、その神経線維が支配する筋の随意性は完全に遮断され末梢性の筋萎縮が発生します。
影響を受ける筋の筋緊張は低下して弛緩性麻痺の状態となります。
関係する筋の腱反射は、消失、減弱します。
徴候 | 下位運動ニューロン |
筋トーヌス | 低下 (弛緩性) |
深部反射 | 減弱、消失 |
病的反射 (クローヌスなど) | (ー) |
筋萎縮 | (+) 遠位に高度に出現 |
線維束性攣縮 | (+) |
筋電図 | 神経原性パターン (高振幅、長持続) |
CK値 (血清筋原性酵素) | 正常 |
疾患例 | SPMA ウェルドニッヒホフマン病 クーゲルベルグ・ウェランダー病 |
上位運動ニューロン障害の特徴
上位運動ニューロン(例えば錐体路)が障害されると、一般的には、障害された部位以下の深部腱反射が亢進し、筋トーヌスも亢進、痙性麻痺の状態となります。
徴候 | 上位運動ニューロン |
筋トーヌス | 亢進 (痙性) |
深部反射 | 亢進 |
病的反射 (クローヌスなど) | (+) |
筋萎縮 | (軽度+) 廃用性筋萎縮(+) |
線維束性攣縮 | (-) |
筋電図 | 波形(正常) |
CK値 (血清筋原性酵素) | 正常 |
疾患例 | 脳梗塞(片麻痺) 脊髄損傷 |
純粋に上位運動ニューロンが障害されると?
※厳密には、上位運動ニューロンが純粋に障害されると、腱反射は消失し、骨格筋は弛緩してしまいます。混乱するかもしれないので、慎重に読んでもらいたいのですが、臨床上、純粋に上位運動ニューロンのみが障害されることは殆どありません。例を上げるとすれば、延髄の錐体が限局的に障害された場合です。この場合は弛緩性麻痺が生じることが多いです。その他の場合、錐体路障害が生じた場合に同時に障害されることの多い皮質核路は、錐体外路系の活動を抑制しています。その抑制系が障害される(抑制が外れる)ため、γ線維の抑制が軽減して、結果として腱反射が亢進したり、痙性麻痺が生じたりすることになると考えられています。
この内容は、以下の文献に説明してあります。
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