PT国試問題の解説です。
12 65歳の女性。慢性心不全。自宅でめまいと失神発作とを認めたため来院した。来院時の心電図を示す。この患者にみられるのはどれか。
1.洞性頻脈
2.心室頻拍
3.心室期外収縮
4.Ⅰ度房室ブロック
5.Ⅲ度房室ブロック
【解説】
1.洞性頻脈
最も一般的にみられる不整脈の一つで、重篤な問題にはなりません。更年期障害の症状として起こることもしばしばあります。
メカニズムは、
洞結節の信号発生が頻回になるために起こります。
原因は、
生理的な心身のストレス、発熱や痛み、脱水、感染、薬剤、甲状腺機能亢進などなどによる交感神経活動の亢進や副交感神経(迷走神経)活動の低下、副腎からのアドレナリンの分泌増加などです。
心電図は、
成人の安静時の心拍数はおよそ毎分50~70回程度で、心拍数が1分間に100回以上を頻脈といいます。
上の図を見てください。
心電図では、小さなますが5つ集まって太線が引かれます。
この5つのマスで0.2秒(一つのマスで0.04秒)です。
RR間隔やPP間隔(心臓の一拍動分)のマス目を数えることで心拍数が計算できます。
この設問では、RR間隔が大きなマスで、おおまかに5つ以上(0.2×5=1秒)で1回の拍動が起こっていますので、60回未満/分の心拍数となります。
心拍数が1分間に100回以上が頻脈ですので、これは頻脈ではないことが分かります。
2.心室頻拍
心室頻拍(しんしつひんぱく)とは、心室から発生する不整脈(心室期外収縮)が引き金となって心拍数が発作的に上がった状態のことです。
心拍数が150~250回に増加した状態で、心電図では、P波はほとんど確認できず、幅の広いQSR波が確認されます。
原因は、
健康な人でもストレスが原因で発生します。
発作が起きると胸部圧迫感、息切れ、めまい、呼吸促進、冷や汗、嘔吐などの症状があります。
心疾患のある人は、心不全の悪化や突然死に繋がることもあります。
これも、1.と同様に考えると心拍数の増加はありませんので、除外できます。
3.心室期外収縮
正常な拍動が起きる前に、心室からの異常な電気活動が起こり、余計な拍動が生じるためにおこる不整脈です。
健康な人でも心室性期外収縮は起こりますが、頻発する場合は心室細動などに移行して突然死の原因にもなるので注意が必要です。
心電図の特徴は、
P波を伴わない幅の広い(0.12秒以上)QRSと、QRSと逆向きの幅の広いT波の出現です。
これは、正常な洞調律よりも早く心室が興奮するために生じます。
設問では、この波形は見られません。
4.Ⅰ度の房室ブロック
そもそも、房室ブロックは、心房から心室への伝導遅延により生じます。
Ⅰ度の房室ブロックの特徴
PQ間隔の延長がみられますが、QRSは脱落しません。
PQ間隔の延長は、どうやってみるかというと
PQ間隔の正常値は、0.12~0.20秒ですので、長くても0.2秒すなわち小さなマスで5マス分(大きなマスで1マス)以下となります。
これを超えるとPQ時間が延長していることになります。
ちなみに、
Ⅱ度房室ブロック
①ウェッケンバッハと②モビッツⅡ型があります。
基本的に房室ブロックではPR間隔が長く(0.2秒以上)なります。
①ウェッケンバッハでは、
PQ間隔が徐々に延長して、突然QRSが脱落します。
②モビッツⅡ型では、
PQ間隔の延長があるが、その間隔は一定で、突然QRSが脱落します。
5.Ⅲ度の房室ブロック
これは、完全房室ブロックと呼ばれます。
特徴は、
P波、QRSはあるが、その関係性(P波に関係なくQRSが出現)がバラバラで無秩序。
但し、PP間隔(一定のリズムでP波が出現)とQQ間隔(一定のリズムでQRSが出現)は一定です。
解答
5.(完全房室ブロック)