腹直筋、錐体筋、腹斜筋、腹横筋、腰方形筋について(起始・停止・作用・支配神経)

目次

腹部の筋について

ここでは、腹直筋鞘、白線、肋下神経、精巣挙筋、弓状線、腰背腱膜、腰腱膜の説明も含みます。

腹部の筋は、肋骨弓および第12肋骨下縁と骨盤上縁との間に張り,腹腔の前壁をつくる前腹筋,側壁をつくる側腹筋,後壁をつくる後腹筋からなります。

  1. 前腹筋:主に体幹の屈曲に作用する
  2. 側腹筋:主に体幹の回旋に作用する
  3. 後腹筋:腰方形筋

 

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前腹筋

腹部前面にあり主に体幹の屈曲に作用します. 

1.腹直筋(動画リンク)
rectus abdominis

腹部前面の大きく長い筋で腱画が筋腹を3~4個に分ける多腹筋.

起始 ・恥骨結合の前面
・恥骨稜(恥骨結節から恥骨結合面の上縁につづく稜線)白線の両側を腹直筋鞘に包まれて上方へ縦走する
停止 ・第5~7肋軟骨
・剣状突起の前面
作用 ・体幹の屈曲
・骨盤後傾
・腹圧を高め,呼息を補助
髄節 T(5)(6)7~12、L1
神経 ・肋間神経 T(5)(6)7~11
・肋下神経※ T12
・腸骨下腹神経 L1

 

2.錐体筋(動画リンク)
pyramidalis

起始 恥骨(腹直筋の起始部の前)
停止 白線※の下部
作用 ・白線を張り,腹直筋の作用を助ける
髄節 T12,L1
神経 ・肋下神経※ T12
・腸骨下腹神経 L1

※白線linea alba

左右の腹直筋鞘が正中線で合した強い紐状の結合組織.

剣状突起から恥骨結合の間に張る.

白線の中央やや下には臍輪(へそ)がある.

※肋下神経subcostal nerve
(=第12肋間神経)

通常の肋間神経は肋骨の間を走行しますが,12番目の肋間神経は最下端の肋骨の下を通るため、肋骨の間を通りません。そのため肋下神経といいます。

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側腹筋

腹部側面にあり主に体幹の回旋に作用する.

1.外腹斜筋(動画リンク)
external oblique

側腹筋の最外層(表層の筋).

起始 ・第5~12肋骨外面

8個の筋尖を持ち,上方5尖は前鋸筋,下方3尖は広背筋の起始と向き合って交差し,斜め前下方に並走する.

停止 最後部は➡腸骨稜の外唇

その他の大部分は腱膜となり➡鼠径靱帯、恥骨稜

そして腹直筋鞘※の前葉に入り➡白線

作用 ・体幹の対側回旋,屈曲,側屈
肋骨の引き下げ
・腹圧を高め呼息補助
髄節 T(5)(6)7~11,12、L1
神経 ・肋間神経 T(5)(6)7~11
・肋下神経※ T12
・腸骨下腹神経 L1

 

2.内腹斜筋(動画リンク)
internal oblique

殆どが外腹斜筋に被われる.
最下部の筋束は,分かれて鼠径管を下行し精巣挙筋※となる.

起始 ・腰腱膜
・腸骨稜の中間線(前方2/3)
・鼠径靱帯(外側2/3)
大部分は外下方から内上方に走る.
停止 後部の筋束は➡第10-12肋骨の下縁

その他の大部分は腱膜となり

弓状線※より上では、2枚に分かれ➡腹直筋鞘※の前葉と後葉の両方,

弓状線より下では、分かれず前葉に入り➡白線

作用 ・体幹の同側回旋,屈曲,側屈
肋骨の引き下げ
・腹圧を高め呼息補助
※体幹の左回旋では右外腹斜筋と左内腹斜筋が同時に作用.
髄節 T7~12、L1、2
神経 ・肋間神経 T7~11
・肋下神経※ T12
・腸骨下腹神経 T12,L1
・腸骨鼠径神経 L1
・陰部大腿神経 L1,2

 

 

※精巣挙筋 cremaster

内腹斜筋の最下部の筋束が分かれたもの.

鼠径管を下行し,男性は精索と精巣,女性は子宮円索を包む.

男性では大腿内側の皮膚刺激で精巣(睾丸)を引き上げる.

支配神経は,陰部大腿神経L(1),2.

 

3.腹横筋(動画リンク)
transversus abdominis

外腹斜筋,内腹斜筋よりも深層.

 

起始 ・鼠径靱帯(外側1/3)
・腸骨稜の内唇(前方2/3)
・腰腱膜
・第7~12肋軟骨
停止 腱膜となって弓状線※より上では腹直筋鞘※の後葉,
弓状線より下では前葉に入り➡白線
作用 ・腹圧を高め呼息補助
・胸腰部の安定
髄節 T7~12、L1、2
神経 ・肋間神経 T7~11
・肋下神経※ T12
・腸骨下腹神経 T12,L1
・腸骨鼠径神経 L1
・陰部大腿神経 L1,2

 

 

腹直筋鞘 rectus sheath

腹直筋を包む腱膜

腹直筋の前方を包む前葉anterior layer of rectus sheath,後方を包む後葉posterior layer of rectus sheathからなる.

腹直筋鞘は外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の腱膜からなる

左右の腹直筋鞘は中央の白線で連結する.

外腹斜筋の腱膜は前葉の最外層,内腹斜筋の腱膜は腹直筋鞘の上部(弓状線よりも上)では2つに分かれ前葉と後葉を包むが臍の少し下(弓状線を形成する部分)では分かれず前葉のみを包む.

腹横筋の腱膜は腹直筋鞘の上部(弓状線よりも上)では後葉を,臍の少し下(弓状線よりも下)では後葉から移動して前葉のみを包む.

 

弓状線 arcuate line

臍の少し下で腹直筋鞘の後葉を形成する腱膜が前葉に移動する部位.

上に凸の弓状を呈す.

弓状線より下方では腹直筋鞘の後葉は形成されず,腹直筋がむき出しとならないように横筋筋膜transversalis fasciaで包まれ,(臓側)腹膜 peritoneumと接触する.

※弓状線は腸骨にも同名のものがある(⇒寛骨)ので要注意です.

胸腰筋膜(腰背筋膜)について

浅背筋膜 胸腰筋膜thoracolumbar fascia(=腰背筋膜lumbodorsal fascia)
胸腰部を被う(皮下)筋膜 胸部を被う筋膜 腰背腱膜(腰部を被う腱膜)
後葉(=浅葉)

(=狭義の腰背腱膜)

前葉(=深葉)

(=腰腱膜lumbar aponeurosis

皮下にある薄い膜で浅背筋(僧帽筋広背筋)の表面を包む.

項部(上部)に向かって厚く,下部とくに腰背腱膜を被う部分は薄い.

固有背筋(の胸部)を包み,上方は項筋膜につづき,下方は腰背腱膜となって仙骨後面に付く.(頸板状筋や最長筋と一部が結合し,その起始部となる.) 固有背筋の後ろを包む腰部の腱膜.

下後鋸筋の筋膜,広背筋の腱膜が重なって結合し厚くなっている部分.

固有背筋の前を包む腰部の腱膜.

第12肋骨腰椎肋骨突起および腸骨稜の間に張る.内腹斜筋,腹横筋,腰方形筋とつながる.

項筋膜nuchal fascia

頸部の固有背筋を被う筋膜.項靱帯,後頭骨に付く.

 

後腹筋

後腹部(腰部)で広背筋および脊柱起立筋よりも深層にある.

腰方形筋(動画リンク)
quadratus lumborum

腰椎肋骨突起の両側で腰腱膜※の前にある長方形の筋.

起始 ・腸骨稜後縁
・腸腰靱帯
・腰腱膜※
腰椎肋骨突起
停止 ・第12肋骨下縁の内側
・第1~4肋骨突起尖端
作用 ・体幹の
側屈(片側の作用)
伸展(両側の作用)
・骨盤の挙上,前傾
※体幹の回旋作用はない(動画リンク)
髄節 T12 ,L1,2,3
神経 腰神経叢

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